最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)228号 判決 1954年12月03日
旭川市一条通四丁目右六号
上告人
吉岡正太郎
同所
同
坂野三郎
旭川市四条通一四丁目左五号
被上告人
会田博章
右当事者間の共同積立金請求事件について、札幌高等裁判所が昭和二八年二月一六日言渡した判決に対し、上告人等から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人等の負担とする。
理由
上告人等連名の上告理由は末尾添付のとおりであつて、当裁判所は次のとおり判断する。
被上告人が本件講会の会長として一切の代表権を有するものであることは当事者間に争いのないところであるから、他に反証のない本件においては、被上告人は本件講会の管理権を有し、之に基き本訴請求をしたものと認むべきであつて、原判決も右と同趣旨に出でたものと解すべきである。従つて所論引用の判例は本件に適切でなく、論旨は採用に値いしない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)
昭和二八年(オ)第二二八号
上告人 吉岡正太郎
同 坂野三郎
被上告人 会田博章
上告人等の上告理由
第一点
原判決は当事者の資格能力について審理をつくさず判決の理由不備の違法がある。
原判決によれば被上告人(原告)は「講元中島武男の共同積立会の一切の代表権あるものである。」と判示されているが、その共同積立会は法律上人格を有するものであるか否か。法人にあらずして当事者能力を有し、その名において訴えることを得る社団又は財団であるか否か。被上告人は「一切の代表権あるものである。」と言うが、然らば当事者はその「共同積立会」で被上告人はその代表者にすぎないのか。それとも被上告人は共同積立会に属する権利を自己個人の名を以つて訴訟当事者となり訴訟行為をなす権限を委任されていて被上告人が個人名義で本件訴訟を追行しているのか否か。
原判決はこの点に関し事実を確定せず全然不明である。
大審院の判例を参照するのに
「組合契約ノ趣旨ガ業務執行者ヲシテ組合契約ニ因リ対外関係ニ於テ組合員ヲ代表シテ法律行為ヲ為スノ権限ヲ授与シタルモノナリヤ、亦単ニ業務執行者タル個人ノ資格ヲ以テ一切ノ行為ヲ委任シタルモノニ過ギザルモノナリヤハ各組合契約ノ趣旨ヲ解釈シテ之ヲ定ムヘキ事実問題ナリトス云云(大正八年(オ)六六六号同年九月二七日民三判、民録二五輯一六七六頁)」
その他業務執行者に自己単独の名において権利を行使せしめる場合に関する判例
大正四年(オ)八六六号同年一二月二五日民三判、民録二一輯二二六八頁
などによつても、組合の代表者は特別授権があるときに限り自己個人の名を以つて裁判上の行為をなし得るものである。
従つて本件債権の権利主体、帰属者を確定せずして漫然本訴請求を法律上正当なりとなした原判決は前記大審院判例と相反する見解に立ち、これを前提として被上告人の請求を認容したか、然らざれば請求の重要な基礎に関する理由不備、審理不尽の違法があり破毀を免れざるものと信ずる。
以上